あんまり攻めた走りをしないから、サスペンションを交換なんて必要ないや。
そう考えるMT-09乗りは、少なくないと思います。
しかし、その理由でサスのチューニングを遠ざけるのは、いささかもったいない。
なにも速く走ることだけが、チューニングの目的じゃありません。
上質な乗り心地を求めるチューニングだって、ありなんですよ!
論より証拠
ということで、IidaさんのMT-09 TRACERに試乗させていただきました。
このマシンに施されたサスのチューニングは、ゆったりとしたペースでツーリングを楽しむIidaさん向けにチューニングされています。
リアにはOHLINS。
まずは、60km/h以下で流れる一般道を走らせましょう。
このマシンを評価するには、むしろもってこいのルートです。
信号待ちから発進。そして、次の信号での停車。
この一連の加減速で、車両が前後にバタつくことなく、ピタッと挙動が安定しています。
交差点に入り、左にターンします。
MT-09のノーマルサスはライン一つ分外に膨らむ感じだったんですが、このマシンは狙ったラインをスイっと通せます。
すぐに右ターン。こちらでもスパッとラインが決まり、無理なく交差点を脱出できます。
片側2車線のR4バイパスに入ります。加速しながら右へ左へとレーンチェンジして、前走車をパスしていきます。
トラックの多いバイパスにできる轍を軽くさばいて、軽やかに走っていきます。
東北道浦和ICから首都高に入り、S1→C2→4号経由でYSP杉並南を目指します。
C2の江北JCT~板橋JCTは、キツめのコーナーやアップダウンが連続する、ハイスピード・コーナリング・ルート。
負荷をかけたときの挙動を確かめたくなって、TRACERのペースをちょっと上げてみました。
タイヤはペタッと路面をつかみ、狙い通りのラインをピタッとトレースします。不安な要素はまったく感じさせません。
MT-09のノーマルサスではフワフワと落ち着かない挙動を見せる速度域ですが、縦方向のGで車体を路面に押し付ける感覚を味わいながら、気分よくコーナリングを楽しめました。
総論。
ゆったりとしたペースでも、ちょっとハイペースでも、しなやかさと安定感を感じる足回りです。
反応はクイックじゃないけど、ダルでもない。その中間のいい塩梅に収まっています。
普段はゆったりと走り、峠道ではちょっとがんばってみる。そんな走り方にあったマシンだと思います。
なにより、約1時間ほどの試乗のあとでも、疲れを感じませんでした。これはツアラーとして強い武器になるでしょうね。
テクニクス訪問
実はこの試乗の前、埼玉県の春日部にあるテクニクスに訪問して、Iida号のチューニングのオハナシをうかがっていたのです。
Iida号の場合、先に自宅でリアをMT-09用OHLINSに換装したあと、テクニクスでフロントのアップグレードと全体のセッティングを依頼したそうです。
TACSのデモ環境があります。右が純正フォーク、左がTACS組み込みフォーク。
ストロークを比べてみると、違いがハッキリわかります。
押し込んだときの感覚、戻ってくるときの感覚、いずれもスムーズで上質なTACSです。
それに比べて純正フォークは、押し込んだときは「ぐぐぐっ」と妙なひっかかりがあったり、ぴょこんと戻ってきてしまったり、しなやかさとは程遠い。
このTASCのダンパーに交換して、しなやかな減衰を得るわけですね。
NITRONリアショック。こういうパーツが並ぶシーンに萌えるkurokiです。
面白そうなのが、SKFのフォークシール。
デモ環境で動かしてみたら、フォークが非常に滑らかに動くのにビックリ!
こんなファクトリーツールも開発して販売しているところに萌えます。
まとめ
ガチガチに固めることがサスのアップグレードだと、思い込んでいませんか。
純正の足回りはメーカーが出した最良の設定だという考えに、縛られていませんか。
違います。チューニングはもっと自由なものです!
乗り手の技量や走る状況に合わせて調整できるから、チューニングに価値があるのですよ。
もっとも、現状に不満がなければ、無理に変える必要はありません。
少しでも上質なものを求めたいという思いがあるなら…検討する価値は十分にありますよ。
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