こだわり、という言葉があります。
細部にまで徹底的にこだわったカスタムマシン、オーナーのこだわりを実現したマシン、といったポジティブな使われ方が多いですが、本来の意味はちょっと違うんです。辞書をひも解いてみましょう。
「こだわる」(三省堂大辞林より引用)
- 心が何かにとらわれて,自由に考えることができなくなる。気にしなくてもいいようなことを気にする。拘泥する。
- 普通は軽視されがちなことにまで好みを主張する。
- 物事がとどこおる。障る。
- 他人からの働きかけをこばむ。なんくせをつける。
実はネガティヴな意味だったんですね。
この意味を知って、勤務先での新人教育のことが、ふと思い浮かびました。
思い込みが強く、あさっての方向へ進んでいっちゃう新人のことを…。
新人教育での試行錯誤
注意しても改善が見られない原因の根本を探るため、よくよく理由を分析してみました。すると、自分の作りたい気持ちを優先して、作業要求の聞き取りを適当にやっていたことが判明。
こんな自己満足なやり方を続けていては、新人にとっても周囲にとっても不幸な結果を招くだけです。
いろんな方法で気づかせようと働きかけましたが、新人は「理解した」と言いつつ、こちらが提案した助言を受け入れようとしません。結局新人の行動は変わらずじまい。
めげそうになりながら、どうやったら変わってくれるのか…と悩んでいたところに、「こだわり」の言葉の意味を知ったのでした。
誰もが助言を受け入れるわけじゃない
助言を受け入れることについて、信頼できる第三者(師匠)から教えを受けられる環境を整えようという趣旨のコラムを書いたことがあります。
新人教育のことを考えていたら、誰もが教えを受け入れることを暗黙の前提にしてコラムを書いていたことに気づきました。
残念ながら、そんな人ばかりではありません。
皆さんの周りにもいませんか?
上手くなりたい速く走りたいと言いながら、周囲からの助言に耳を傾けず、合理的な説明のつかない考えにとらわれ、上達できずに悶々としている、そんな感じのバイク乗りが。
こういう方は、自分で道を切り開いて進むほかありません。
イバラの道ですが、仕方ないことです。
後退することも覚悟して
ライディングの上達には、今までの延長線上で改善できることだけじゃありません。
根本から見直して、ドラスティックな変化をしなきゃならないことだってあるんです。
「今のスピードで、今の乗り方だと、コケたときはかなりイクね」
そう指摘されて、ハングオフにトライすることにしたkuroki。
ですが、アタマでは理解できても、カラダがなかなか言うことを聞いてくれない のです!
なので、言われてもできない人の気持ちは痛いほど理解できます。ひょっとしたら新人の心境も同じなのかもしれません。
ですが、どうしても次のステップに進みたいなら、覚悟してやりきるしか道はありません。
kurokiの場合、今までの走り方をほぼ全て否定して、新たに積み上げ直すことになりました。
当初は走るペースがめっきり落ちましたし、壁をまるで越えられないkuroki自身にも嫌気がさしました。
あきらめて以前の走り方に戻したくなることもありました。
ですが、リーンウィズのままではこれ以上速く走れないことは明白なので、我慢して練習を続けましたよ。
助言を受け入れられるまで、約6年。
長い長い低迷期間を過ごすことになりましたが、それだけのリターンはありました。
その「こだわり」を捨てられるか
kurokiは20数年間の社会人生活を、助言を糧にして、自分を調整して生きてきました。
助言は時に耳に痛く、受け入れることが難しい。
ですが、時間をかけて、少しずつでも飲み込んで、自分の行動を調整していけば、確実に自分を成長させてくれました。
逆に、助言を受け入れずに自己流でもがくことは、労力の無駄使いに映ります。
いかに「こだわり」を捨てられるか、それが壁を超えるカギになるはずです。
我々に使える時間は、案外多くないんですよ。
信念を持つことと、助言を受け入れることは、両立します。
むしろ、余分なものが取り除かれ、より純化して研ぎ澄まされた信念が残るのですよ。
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